「あんたがいないと生きてけない」なんて、嘘吐かないでよ。 僕がいなくても平気で笑える君を知ってるよ。 依存してるのは僕の方。 依存させたのは君の方。 必死な振りをしないで。 これ以上みじめな気分にさせないで。 僕が君から離れよう。 だからその手を離して。 物を持ちたがらない男だった。 何も持たない彼を自室に引き入れて、半年間一緒に過ごした。 人の温もりを求めない彼を、そっとそっと抱きしめて、殴られても抱きしめて、諦めて力が抜けたらキスをして。 きっと彼にしたら最初から不満だらけだった生活。 それでも、何日も帰ってこなくても、山本の目が覚めれば返り血を浴びた姿で、玄関先で眠り込んでいたのに。 「何でだろーな……帰ってこねえんだ」 額に手を当てて呟いた。 壁にもたれてずるずるとしゃがむ。 野生動物を人に馴らすように少しずつ、けれど確かに、この部屋で雲雀は落ち着くようになっていったのに。 暇をみつけて買い揃えていった、茶碗や歯ブラシや服は、全て壊され破かれてゴミ箱の中。 もう使わないとはっきり見せつけるように。 それの他には自分の匂いを何も残さず、雲雀は出て行った。 何が悪かった? どこで間違えた? 自問を繰り返しても答えは出ない。 最後の日、自分が部屋から出る時に雲雀が微かに浮かべていた笑み。 その、儚いほどの表情。 あの時気づいて抱きしめれば、出て行かなかったのか。 もっと自分に繋ぎとめるだけの力があればよかったのに。 自分が夢中になったみたいに、雲雀もまた。 愛した分だけ、必ず愛されたなら。 追いかけるつもりで探し回っても、雲雀はどこにもいなかった。 あの目立つ男が、身を隠すように噂の一欠けらも残さない。 募る不安、いらだち。 全てが悪い方向へ流れていく。 そんなに逃げたかったのか、嫌だったのか、飽きたのか。 通じたと、小さな幸せに浸っていたのは自分だけなのか。 逃げた鳥は戻らない。 再会した君は、少し困った上目遣いで笑った。 ほら、僕がいなくても生きているだろう? 「ごめんな」、欲しかったのは謝罪じゃないよ。 「それでも、オレは……ずっと待ってる」、そんな温い言葉もいらない。 強く引く気が無いなら、早くその手を離して。 無駄に熱い手は、不愉快だから。 君に僕はあげない。 |
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