一緒 たとえば、似た者同士って、あるだろう? 以心伝心なんて、血を分けた親兄弟とか、長い間連れ添った夫婦ならともかく。 会って少ししか経たない、他人同士の間に生まれるなんてまず無理だ。 けれど、まるで運命が導いたように、ぴったりと感覚が合ってしまう二人。 それを運命だと感慨にふけるような彼らではないので、俺たちすっげー気が合うのな、と笑う程度で済んでいる。 「やっぱ、断然カルピスは原液と水は、1対2っすよ」 「なー! 黄金比だよな! ロマーリオのやつ、それじゃ濃すぎるって言っていっつも箱に書いてある通りの薄いやつ作るんだぜ!?」 「ちょっと濃いくらいのが喉にしみて美味いのに…偶にロックもするけど」 「おっ、イケるクチだなー。でかい氷であんま溶けないのを、ちびちびやるのが美味いよな」 黒髪黒目、身長はあるが、まだ筋肉の発達が追いつかずどこか華奢な印象の少年と、金髪茶の目、若いが不安定な脆さはすっきり無くなった青年が並んで歩いていた。 歩幅も一緒、速度も一緒。 会話のテンポも内容も一致。 あまりの居心地の良さに、互いに家族といるような錯覚を起こさせる。 「あー、こんな話してたら、喉渇いてきた。そこの自販機で何か買ってきませんか?」 「俺もちょうどそう思ってたとこだ」 ニカ、と歯を見せて無防備に笑う顔も同じ。 少年・山本が指した自販機に、青年・ディーノが足を向ける。 ところが、部下を連れていないと運動神経が切断される特異体質のディーノの足は絡まり、「あ!」っと思った時にはもう遅く、地面と熱烈キッスするまであと0.5秒。 すんでの所でそれを救出したのは、隣にいた山本だ。 中学では野球部のエースとして活躍し、一流のヒットマン・リボーンから「生まれながらの殺し屋」とのお墨付きまでもらっている。 さりげない仕草で「大丈夫すか?」と助けられるのも、今日出会ってからもう何度目だろう。 他の人間のように呆れたりせずに、毎度毎度丁寧に支え直してくれる。 「どーぞ」 財布を出せば出したで、ユーロしか持っておらず、挙句例のドジで小銭をぶちまけてしまい、二人で転がるお金を拾い集めた後。 山本が缶ジュースを差し出した。 件のカルピスの隣に並んでいた、濃縮還元・果汁100パーセントのオレンジジュースだ。 「サンキュ」 ふわふわと風に揺れるきれいな金の髪をかきながら、ディーノはありがたくそれを受け取った。 見れば、山本も同じものを飲んでいる。 ごくん、と反らされた喉が動いた。 じっと見つめる視線に気づいたのか、山本は缶を傾けてにっと笑った。 「普通に売ってるカルピスは薄いから好きじゃなくて、濃い100パーセントジュースが飲みたいなと、オレが思ったから」 完璧だ。 ディーノは将来の伴侶を決めた――と、そこまで思っていはしないが、ずっと一緒にいれたらなあ、というようなことは考えた。 無理なく自分を助けられる運動神経。 全ての行動・思考において一緒。 それでいてころころと代わる素直な表情に、飽きはこない。 もしも嫌いになる時がくるとしても、きっとそれは同時だ。 「なあ、山本。おまえといるとすっげえ楽しくて楽だ!」 がしりと肩を組むと、一瞬きょとんとした顔が間近にあって。 でもそれが見る見るうちにぱあっと咲いて。 「オレも!」 二人とにかく嬉しくて、くっついてはしゃぎながら、ずっと、馬鹿みたいに笑っていた。 |
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