オレをおいて、どこにもいくなよ。 少年願望 「強くなったな」 獄寺が、うれしそうに言った。 「ああ」 オレも笑った。 半分、無理やり。 でもオレ、ホントはおまえに強くなんてなって欲しくないんだよ。 弱いままでいてよかったんだ。 そしたらおまえはオレの後ろにいるだろ。 ずっと、背中に隠れててくれるだろ。 オレから、離れないだろ。 戦うおまえは誰より強くてキレイだけど。 「大丈夫だよ、山本」 不安になるんだ。 いつか遠いところへいって、帰ってこないんじゃないかって。 誰かをかばって、いなくなるんじゃないかって。 やさしいから。 強いから。 考えてしまうんだ。 おまえよりもオレがずっと強かったら。 オレよりもおまえがずっと弱かったら。 オレがおまえを守るからって約束、できたのに。 離れるなよって言えたのに。 「大丈夫だよ、ちょっと予定が早まっただけだし」 沢田綱吉、突然の退学。 理由は、イタリア留学。 「いっぱい電話するからさ」 抱きつく獄寺を撫でながら落ち着かせるように笑った。 「心配しないでよ。一人で行くわけじゃないんだから」 でもオレはいないだろう? 「あ、ごめん。そろそろ時間だ。じゃあね、見送りありがとう二人とも」 こんなにも簡単に、別れの日はくる。 「気をつけて」とか「元気でな」とかありきたりなセリフを、オレはちゃんと言えただろうか。 まだ小さな背中が見えなくなって。 「おまえ、何泣いてんだよ…!?」 「……あ?」 ぎょっとした顔の獄寺を見下ろすと、ぽろっと目からなんか落ちた。 透明な水だ。 ごしごし手のひらでこすった。 「はは……なんか、ツナがいなくなるのがすげー淋しいみてーだ」 「……でかい図体して、みっともねーから早く泣き止めよ」 チッと舌打ちしても、獄寺は隣にいてくれた。 ずっとあふれ続けた涙がとまるまで。 空港からの帰り道、ズズッとオレは、思い切りはなをすする。 オレをおいてどこにもいくなよ。 それを飲みこめたオレは、たぶん少しだけ大人になった。 きっと、そういうことなんだろう。 |
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