「大丈夫。」2回呟いた君。多分、大丈夫じゃない。 だから。 「次、オレ、スクリュードライバー」 「の、ウォッカ抜きで」 なんて言葉が口から出てくる。 ああ面倒くさい。 何やらせるんだろうね、この子は一体。 らしくもなく他人の世話を焼く自分と、焼かせるとろんとした目の男に溜息を吐いた。 それでもやらずにはいられないというのは、本当にどういうことだろう。 僕もそれなりに酔っているのだろうか。 「バッカ野郎、おまえ、ウォッカ抜いたらただのオレンジジュースじゃねーか!」 「君くらいの子供にはそれで上等だよ」 「んだとコラ!」 カウンターに向かって、一つ席を空けて隣。 色素の薄い、光まで弾くような髪が揺れる。 中身がこれじゃ、もったいないほどの容姿は、険悪な顔をしてみせなくとも嫌でも目立つ。 ああ本当に面倒くさい。 いくら馴染みの店だからって。 偶に呼び出したと思えばこれなの。 二度目の溜息と一緒に、ウィスキーを飲み干した。 「なんであいつの言うこと聞くんだよ」 オレンジジュースを注がれたカクテルグラスを傾けている、顰め面。 尖らせた口先は幼いが、彼がやると妙に艶めいて見える。 マスターは完璧な笑みで答えを控えた。 まあ、酔っていない方の僕の言うことを聞くのは当然だ。 思っているうちに、アルコールに強くない体はぐらついて、広い額をテーブルにつけた。 すぐに安らかな寝息が聞こえてくる。 「よほど安心してらっしゃるんですね」 貴方がいらっしゃる時にしか、彼は潰れませんよ。 全くもって迷惑なんだけれどね。 これが、彼の僕を困らせる常套手段だ。 無意識にやってるらしいけど、だからこそ相当ムカつく。 君の「大丈夫」はちっとも大丈夫じゃないんだから。 僕に何か求めてくるっていうことは、かなり切羽詰ってるということ。 じゃなきゃ僕に近づきさえしない。 それで君は何が欲しいのかな? 僕は袖口のトンファーに手をかけた。 「大丈夫。」2回呟いた君。多分、大丈夫じゃない。 |
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