デス・シガレット 「煙草っておいしいの?」 「別にうまいまずいで吸ってるわけじゃねーよ」 火をつけようとした煙草をとられ手持ち無沙汰の獄寺は、仕方なくポケットに手を突っ込んだ。 青空の広がる屋上でフェンスに背を預けて、だるく座る横に立つ雲雀が、手の中の黒く四角い箱を眺める。 デスというそれは名の通り、髑髏が描かれているパッケージが気に入って買ったものだ。 ダイナマイトに素早く点火できる利点だけの為に吸っているので、味はあまり気にしていない。 「お前、吸ったことねーの?」 「風紀委員が風紀乱してどうするの」 それは果たして、暴力で統制を行うよりも良いのか悪いのか。 獄寺は微妙な顔で「へぇ」と言うしかなかった。 「それに僕、健康志向だから」 「……へぇ」 「副流煙は知ってる? 喫煙者よりも、周りの人間の方が、害が大きいんだよ」 別にお前が死のうと関係ないね、と口にはしないが冷めた目で見上げれば、雲雀は煙草を鼻に近づけ香りを嗅いでいた。 ああ。この匂い、と一人合点する。 「君の口の中だともう少し甘ったるい感じもするけどね」 ふと笑んだ目が近づく。 屈んだ雲雀の手がフェンスを掴んだ。 「この味は嫌いじゃないよ」 「ふん」 心底迷惑そうに、獄寺が手のひらで唇を拭う。 「返そうか?」 薄くわらいながら差し出された黒い箱を、乱暴に受け取る。 意外にあっさりと取り戻せた煙草。 けれどすぐ咥える気にもなれなかった。 |
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